デトロイト・メタル・シティ完全版|本音と仮面の狭間で

「本当はオシャレなポップスがやりたいだけなのに、ステージに立った瞬間、口から飛び出すのは『殺ス』」。会社で求められる顔と、ひとりの夜にこっそり聴く音楽が、まるで別人のものだと感じたことはないだろうか。あの夜、僕はこの漫画を開いて、声を出して笑いながら、なぜか少しだけ救われていた。

デトロイト・メタル・シティ 完全版 表紙

デトロイト・メタル・シティ完全版が描くもの

渋谷系ポップスを愛する純朴な青年・根岸崇一。大分から上京してきた彼の夢は、オシャレでハッピーな音楽でみんなを笑顔にすることだった。しかし、なぜか彼が立っているのはインディーズシーンで圧倒的人気を誇る悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」のステージの上。白塗りに角を生やし、ギターをかき鳴らした瞬間、彼は強姦・殺人・父親殺しを叫ぶ最凶のカリスマ、クラウザーII世へと豹変する。観客は熱狂し、本人は心の中で泣いている。

僕がしたかったのは、こんなバンドじゃない!!

20周年を記念した完全版では、雑誌掲載時のカラーページが再現され、作者・若杉公徳が自ら全話を振り返る「SELF LINER NOTES」が新規収録。最終10巻には、ファンが20年待ち望んだ結成秘話が描き下ろし新エピソードとして加わっている。すべての始まりが、ようやく明かされる。

デトロイト・メタル・シティ完全版を読むとこんな体験ができる

  • 下品なのに、なぜか目が離せない中毒感
    「殺ス」「レイープ」を連呼するクラウザーのMCを、気づけば声に出して真似している自分がいる。
  • 本音と仮面のギャップに胸が締めつけられる切なさ
    楽屋ではポップス雑誌を読んでオシャレなTシャツを買うのに、ステージでは父親殺しを叫ぶ。その落差に、なぜか涙が出そうになる。
  • ページをめくる手が震えるほど笑ってしまう瞬間
    電車の中で読んではいけない。声を出さずに笑うのが本気で難しい、そういう作品。
  • クラウザー降臨の瞬間に走る、背筋のゾクゾク
    ギャグ漫画なのに、ステージシーンになると本物のメタルライブを観たような熱量に飲み込まれる。
  • 「自分のやりたいこと」を問い直したくなる読後感
    求められる役割と、本当にやりたいこと。その狭間で揺れる根岸の姿が、不思議と自分自身に重なる。

デトロイト・メタル・シティ完全版がこんな人に刺さる

  • 周りに合わせるうちに、本来の自分を見失いかけている人
    求められるキャラを演じ続けることに、ふと疲れを感じた夜にこそ開いてほしい。根岸の叫びが、なぜか自分の代弁に聞こえてくる。
  • 真面目で繊細な作品ばかり読んでいて、頭の中を一度空っぽにしたい人
    理屈も整合性も超えた爆笑を、久しぶりに体験できる。1話読み始めたら、止められなくなる覚悟で。
  • 音楽が好きで、ジャンルの垣根に少しでも触れたことがある人
    ポップスとデスメタル、両極端のカルチャーがここまで愛情深く描かれた作品は稀。どちらのファンにも刺さる細部が随所にある。

白塗りの裏側にいる、ひとりの気弱な青年。彼が今夜もステージに立つ理由を、ぜひ一度、自分の目で確かめてほしい。

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