夢を諦めた人間は、たいていその場所から離れようとする。傷に触れたくないから。でも司は、氷の上に二度と立てなくなった男が、今日もそのリンクの床を磨いている。なぜここを離れないのか——そこに踏み込んでくる少女が現れたとき、物語は動き出す。
僕の心のヤバイやつが描くもの
名古屋のフィギュアスケートリンク。深夜、誰もいないはずの氷の上でひとり練習する少女・結束いのりを、清掃員の司は目撃してしまう。その滑りは、素人目にも「これは違う」と分かる圧倒的な才能だった。
「コーチになってほしい」
唐突なその言葉が、司の止まっていた時間を動かし始める。他人の夢を背負うとはどういうことか。自分が諦めた夢の残像と向き合い続けることとは何か——この作品が本当に問いかけているのは、スケートの勝敗でも師弟の絆でもなく、もっと個人的な「未練の正体」だ。
僕の心のヤバイやつで得られる読書体験
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誰かの才能に圧倒されながら、目が離せなくなる感覚
いのりが氷の上に立つたび、「この子は本物だ」という確信が読者にも伝わってくる。才能のそばに立つことで生まれる、高揚と焦りが混ざった息苦しさ。 -
止まっていた人間が、ゆっくりと動き出す瞬間の息苦しさ
夢を諦めた日から時間が凍りついていた司が、少しずつ「今」に引き戻される。その過程は爽快ではなく、じわじわと苦しい。でも、その苦しさこそが本物だ。 -
氷上の一瞬がコマに閉じ込められ、永遠になる体験
フィギュアスケートの動きを漫画で表現することの難しさを、この作品は正面から乗り越えている。ページをめくるたびに、視覚的な鮮烈さが待っている。 -
「コーチ」と「選手」という関係が、読み進めるごとに揺らぐ緊張感
教える側と教わる側が互いを変えていく。その構造が、ページをめくる手を止められなくする。 -
スポーツ漫画を読んでいるはずなのに、じわりと「自分の話」になる感覚
「夢を諦めたこと」「誰かの可能性に賭けること」——物語の外側にある自分自身の過去や選択が、ふと頭をよぎる。
こんな人に、僕の心のヤバイやつは刺さる
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✅ 「もう無理だ」と思って諦めたものが、まだ心のどこかに残っている人
司の痛みは、夢破れた人間にしか持てない種類のものだ。その感触を、この作品は正確に描いている。 -
✅ 支える側に回ってから、自分のことを後回しにしてきた人
親・上司・先輩——誰かを育てることに人生の重心を移したとき、自分自身はどこにいるのか。この物語は、その問いを静かに突きつける。 -
✅ 「熱血・根性・逆転」とは別の角度からスポーツを描いた作品を探している人
勝つことより「氷の上に立つ理由」を問い続ける物語。スポーツ漫画の文法で書かれた、もっと内側の話。
僕の心のヤバイやつの実績
🏆 受賞歴
次にくるマンガ大賞 2022年 第1位
2021年(16位)から翌年に1位へ。読者が追いかけ続けた結果が、この数字に出ている。
アニメ化も果たし、フィギュアスケートという舞台が映像でも大きな話題を呼んだ。原作は全13巻。読み始めたら最後まで止まれなかった、という声が後を絶たない。
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