3月のライオン|盤の上で息ができる

夜中、ふと「自分はこの世界のどこにいてもいい人間なんだろうか」と感じたことはないだろうか。家族の中にも、学校にも、職場にも、しっくりくる場所がない。そんな夜にこそ、下町の小さな家の灯りと、将棋盤の前で背中を丸める17歳に出会ってほしい。

3月のライオン 表紙

3月のライオンが描くもの

17歳のプロ棋士・桐山零は、将棋しか自分を肯定できるものを持たない。幼くして家族を失い、ひとり下町のマンションで暮らす彼の前に現れるのは、川本家の三姉妹——あかり、ひなた、モモ。湯気の立つ食卓と、将棋会館の張り詰めた静寂。零はそのふたつの世界を行き来しながら、「ここにいていい」と思える場所を、ぎこちなく探していく。

盤上では命を削るような勝負が、盤外ではごはんと笑い声と、時に重く沈むような影がある。少年が大人になっていく時間を、これほど丁寧に、痛みごと描いた作品はそう多くない。

自分の居場所を、自分で選び取れない子どもの不器用さ。それを抱えたまま、それでも前を向こうとする人間の姿。

3月のライオンを読むとこんな体験ができる

  • 誰かに「おかえり」と言ってもらう温度
    川本家の食卓に、自分まで一緒に座っているような錯覚に陥る。湯気と味噌汁の匂いまで紙面から立ち上がってくる。
  • 勝負の場で空気が薄くなる感覚
    対局シーンに入ると、ページをめくる手が止まる。羽海野チカが描く「読み合いの静けさ」は、将棋を知らなくても呼吸が浅くなる。
  • 自分の居場所が見つかっていく祈りに近い気持ち
    零が少しずつ人と関わっていく姿に、なぜか自分のほうが救われていく。
  • 痛みを抱えたまま生きていく勇気
    いじめ、喪失、嫉妬——目を背けたくなるテーマも逃げずに描く。それでも読後、なぜか前を向ける。
  • 季節と東京の風景が体に染み込む感覚
    隅田川の橋の上、川沿いの桜、夏の夕立。読み終わると、その町を歩いてきたような余韻が残る。

3月のライオンはこんな人に刺さる

  • 自分の居場所が分からなくて、夜なかなか眠れない人
    家族にも友人にも言えない孤独を抱えている人ほど、川本家の灯りに救われるはず。
  • 「強くなりたい」と思ったまま、立ち止まっている人
    才能と努力、嫉妬と尊敬、勝つことの意味。盤を挟んだ人間ドラマがそのまま自分への問いになる。
  • 大切な人をうまく守れなかった後悔を抱えている人
    零が「自分は誰かのために何ができるのか」を問い続ける姿は、過去に一度でも誰かを救えなかった経験がある人ほど重く響く。
  • 『ハチミツとクローバー』で泣いた人
    羽海野チカの「あの繊細な空気感」がさらに深く、静かに、深度を増して帰ってきている。

3月のライオンの実績

🏆 受賞歴

マンガ大賞2011 大賞

『マンガ大賞2009』第3位を経て、2011年に大賞を受賞。書店員と読者が選ぶ年に一度の賞で頂点に立った作品。

🏆 このマンガがすごい!

2009年4位 / 2012年5位 / 2017年7位

連載開始から長期にわたって複数回ランクイン。一過性ではない、読むほどに評価が積み重なるタイプの傑作であることを証明している。

🎬 メディア化

アニメ化(NHK総合)/実写映画化(神木隆之介主演 前後編)

監修にプロ棋士・先崎学九段。アニメ版はシャフト制作、音楽はBUMP OF CHICKENが主題歌を担当。原作・アニメ・映画、どこから入っても揺るがない世界観の強度がある。

将棋を知らなくていい。むしろ知らないほうが、桐山零が見ている景色をまっさらに受け取れるかもしれない。1巻の最初の数ページ、彼が橋の上を歩く場面だけでも、もう引き返せなくなる。

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