ねずみの初恋|「道具」と呼ばれた少女の、初めての感情

可愛い顔をした少女が、こちらを見ている。澄んだ、少し虚ろな目で。その手は——たった今、誰かの命を奪ったばかりだ。
この「おかしさ」が止まらない。そういう読書体験が、ここにある。

ねずみの初恋 表紙

ねずみの初恋が描くもの

主人公・ねずみは、物心がつく前からヤクザ組織に育てられた少女だ。銃も毒も使わない。刃物すら必要としない。その小さな身体ひとつで、ターゲットの命を奪う。

組織のボスである鯆(イルカ)は彼女を「最強の道具」と呼ぶ。それは称えているのではなく、ただの事実の説明だ。ねずみには感情の代わりに「命令」があり、遊びの代わりに「任務」がある。必要なときに呼び出されて使われる——それだけが、彼女の存在意義とされてきた。

だが、このマンガのタイトルには「初恋」という二文字がついている。

「道具」として生きてきた少女が、初めて人間として何かを感じるとき——その物語は、いったいどこへ向かうのか。

かわいらしい顔立ちで、まるで暴力とは無縁に見える少女が、澄んだ目で人を殺す。その「ずれ」が画面の外にまで染み出してくる感覚が、この作品には確かにある。

ねずみの初恋を読むとこんな体験ができる

  • 「この子は何も悪くない」という、罪悪感に近い感覚
    ねずみは命令に従っているだけだ。でも命が奪われていく。その事実の前で、読者の中に説明しようのない感情が積み重なっていく。
  • 可愛いのに目が離せない、という自分への薄気味悪さ
    笑顔で、無邪気に、躊躇なく——そのギャップが読む手を止めてくれない。止めたいのに、止められない。
  • 殺害シーンの後に残る、静かで奇妙な余韻
    血が流れる場面に、不思議なほど「静けさ」がある。その静けさが、ページを閉じた後も消えずに残り続ける。
  • 「人間らしさとは何か」という問いが、頭に居座る感覚
    感情を持たない道具として育った少女が「初恋」を知る——その設定そのものが、人間の本質への問いかけになっている。

こんな人にねずみの初恋は刺さる

  • 「悪役なのに、好きになってしまった」という体験をしたことがある人
    道徳的に正しくないものに惹かれる感覚を、後ろめたく思いながらも楽しめる人なら、ねずみはそのど真ん中を突いてくる。
  • 「感情がないはずのキャラクター」に、逆に人間を感じてしまう人
    感情を持たないとされる存在が、ちょっとした仕草や眼差しで胸を締め付けてくる——その矛盾が好きな人に。
  • 綺麗じゃない愛し方の話を、今夜読みたい人
    温かく美しいだけの恋愛物語に飽きていて、もっと複雑で歪で、それでも確かな何かを感じたい——そういう夜に開くべき作品だ。

ねずみの初恋の実績

🏆 受賞歴

2025年「このマンガがすごい!」第9位

2024年「次にくるマンガ大賞」第12位

受賞だけではない。アニメ化・実写ドラマ化・映画化という三媒体同時のメディア展開は、業界がこの作品に本気で賭けていることを示している。「知る人ぞ知る」を超え、いま最も注目を集めているマンガのひとつだ。全10巻、まず1巻だけ読んでみてほしい。

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